雇用保険の適用拡大はいつから?週10時間で変わる働き方

雇用保険の適用拡大はいつから?週10時間で変わる制度のすべて

週10時間しか働いていないあなたが、失業しても約75万円の給付を受け取れる時代が来ます。


📋 この記事の3つのポイント
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適用拡大は2028年10月1日から

2024年5月に改正雇用保険法が成立。週の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に引き下げられ、約500万人が新たに加入対象となります。

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保険料は月数百円、でも給付は最大数十万円

週10時間・月給5万円のパートでも雇用保険料の自己負担は月約275円。一方で失業時には基本手当や育児休業給付などの大きな給付が受け取れます。

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企業側の準備も2028年までに必須

新たに加入対象となる従業員の把握・届出・給与計算対応が必要。短時間労働者が多い中小企業ほど、今から対策を始めることが重要です。


雇用保険の適用拡大の概要と「2028年10月」という施行日の意味

2024年5月10日、「雇用保険法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立しました。この改正の目玉となるのが、雇用保険の適用拡大です。施行日は2028年10月1日(令和10年10月1日)とされており、現時点(2026年3月)からおよそ2年半後にあたります。


これまでの雇用保険では、加入要件のひとつに「1週間の所定労働時間が20時間以上」という条件がありました。この改正によってその基準が「10時間以上」に引き下げられます。つまり、従来は対象外だった超短時間労働者も、一定条件を満たせば雇用保険に加入する義務が生じます。


なぜ施行まで約4年もかかったのかというと、影響の規模があまりにも大きいためです。厚生労働省の試算では、今回の改正により新たに雇用保険の被保険者となる人数は最大約500万人に上ります。これは東京都の就業者数(約700万人)の7割近くに相当するスケールです。企業・労働者・行政の三者がそれぞれ準備を整えるための猶予として、4年以上の準備期間が設けられた形です。


なお、今回の改正雇用保険法は適用拡大だけでなく、教育訓練・リスキリング支援の充実、育児休業給付の財政安定化なども同時に盛り込まれています。2024年〜2028年にかけて段階的に施行されており、すでに2025年4月からは自己都合退職の給付制限期間が原則2か月から1か月に短縮されるなど、一部の改正はすでに私たちの生活に影響を与えています。


つまり「雇用保険の適用拡大は2028年10月から」という一点を押さえればOKです。


参考:厚生労働省による改正法の概要資料(公式)
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省(PDF)


雇用保険の適用拡大の具体的な加入条件と「週10時間」の正しい計算方法

2028年10月以降の雇用保険加入条件は、次の2つです。



















条件 現行(〜2028年9月) 改正後(2028年10月〜)
週の所定労働時間 20時間以上 10時間以上
雇用見込み期間 31日以上 31日以上(変更なし)


「週10時間」というのは、雇用契約書や就業規則に定められた所定労働時間の合計です。実際に働いた時間(実労働時間)ではない点に注意が必要です。たとえば「週2日・1日5時間」のシフトでも、所定労働時間の合計が週10時間に達するため加入対象になります。週3日勤務の場合は1日あたり約3時間20分以上のシフトで対象に入る計算です。


変形労働時間制のように週ごとの労働時間が固定されていない場合は、1か月や3か月などの一定期間を単位として、週の平均労働時間で判定します。ある週に5時間しか働かなくても、月平均で週10時間を超えていれば加入対象になるということです。これは意外ですね。


また、当初は31日未満の雇用だったとしても、契約更新で31日以上の雇用見込みが生じた時点から、遡らずにその日から加入対象に切り替わります。雇用見込みが31日以上が条件です。


加入対象外となるのは、たとえば65歳以上の「高年齢被保険者」として別枠で加入している人、昼間学生、公務員などです。ただし、夜間・通信・定時制の学生は対象になります。加入対象外かどうかはハローワークで確認するのが確実です。


参考:改正後の被保険者要件の詳細(厚生労働省公式パンフレット)
令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について|厚生労働省(PDF)


雇用保険の適用拡大で労働者が得られる具体的な給付内容とその金額

雇用保険に加入する最大の理由は、万が一の際に受け取れる給付です。適用拡大によって、これまで対象外だった短時間労働者も以下の給付が受けられるようになります。


① 基本手当(いわゆる失業給付


退職して求職活動をする際に受け取れる給付です。受給額は離職前の賃金日額の50〜80%で、所定給付日数は加入期間・年齢・離職理由によって90〜330日分と幅があります。


たとえば雇用保険に20年以上加入して、賃金日額が5,000円だったとします。64歳11か月で退職した場合、基本手当は最大150日分で合計75万円を受け取れる計算です。自己都合退職でも2025年4月以降は給付制限が原則1か月に短縮されており、以前より早く受給できるようになっています。


② 育児休業給付・介護休業給付


育休取得中は休業開始から6か月間、賃金の67%相当が支給されます(以降は50%)。パートでも雇用保険に一定期間加入していれば受給資格が生まれます。育児中の方には大きなメリットです。


③ 教育訓練給付


資格取得や職業訓練の費用を一部補助してくれる制度です。一般教育訓練給付は受講費の20%(上限10万円)、専門実践教育訓練給付では受講費の最大80%(年間最大56万円)まで支給される場合があります。


これは使えそうです。副業・転職・スキルアップを考えている方にとって、雇用保険への加入は「保険料以上のリターン」が見込める仕組みといえます。


参考:各種給付の詳細は中小企業庁が運営するJ-Net21で丁寧に解説されています
改正雇用保険法(第4回)—雇用保険の適用拡大およびその他の見直し|J-Net21


雇用保険の適用拡大で変わる「被保険者期間」の算定ルールと失業認定基準

雇用保険の加入対象が「週10時間以上」に拡大されるだけでなく、失業給付の受給資格を判定する際に使う被保険者期間の算定基準も同時に緩和されます。この点は見落とされがちですが、実は短時間労働者にとって非常に重要です。


現行制度では、被保険者期間として「1か月」とカウントされるのは、その月に賃金の支払い基礎となった日数が11日以上、または労働時間が80時間以上ある場合です。週20時間働いていれば月80時間程度になるので、この基準は現行被保険者には比較的クリアしやすい設計でした。


しかし週10時間前後しか働かない人は、月の労働時間が40〜50時間程度にとどまるため、従来基準のままでは被保険者期間が1か月としてカウントされない月が生じやすくなります。そこで改正法では算定基準も見直され、「6日以上または40時間以上」でカウントOKと緩和されます。
























項目 現行 改正後(2028年10月〜)
被保険者期間算定 11日以上 or 80時間以上 6日以上 or 40時間以上
失業認定基準(失業と認定される労働時間) 1日4時間未満 1日2時間未満
賃金日額の下限算定基準 週20時間労働ベース 週10時間労働ベース


失業認定基準も「1日2時間未満の労働日を失業日と認定」に引き下げられます。現行では1日4時間以上働くと失業日とみなされず、その日の基本手当は支給されませんでした。改正後は2時間以上で失業日とみなされなくなるため、週10時間の短時間労働者でも公平な給付を受けやすくなります。


つまり、単に加入対象が広がるだけでなく、「加入しても給付を受けにくい」という不利が解消される方向で制度全体が整備されるということです。このセットで見てこそ、適用拡大の意義が正確に理解できます。


雇用保険の適用拡大を「金融目線」で読む——保険料vs給付の損得計算

金融に関心のある方であれば、「保険料をどれだけ払って、どれだけの給付が期待できるか」という費用対効果の観点で雇用保険を評価したくなるはずです。ここでは実際の数字で確認してみましょう。


保険料の負担(労働者側)


2026年度の雇用保険料率は全体で1.35%(前年1.45%から引き下げ)。うち労働者負担分は0.5%(失業等給付分のみ)程度です。


たとえば月給5万円のパート(週10〜15時間程度)の場合。
























月収 月の保険料(労働者負担・約0.5%) 年間保険料
3万円 約150円 約1,800円
5万円 約250円 約3,000円
8万円 約400円 約4,800円


コーヒー1杯分以下の月額負担です。


給付の期待値


一方で、仮に自己都合退職して90日分の基本手当を受け取る場合、日額が3,000円(月収の約50%相当)だとすれば、合計で27万円の給付になります。年間保険料3,000円に対して、受給する可能性があるのは27万円です。90倍の差があります。


さらに教育訓練給付の場合、資格スクール費用15万円のうち80%(=12万円)が補助されるケースも存在します。これは完全な「知っていると得する」案件です。


ただし、7割以上の人が雇用保険の適用拡大を「知らなかった」と回答したアンケート結果(株式会社ビースタイルホールディングス、2024年調査、回答者536名)があります。知らないままでは、2028年以降に加入対象になっても制度を活用できずじまいになるリスクがあります。


雇用保険料率の最新情報は毎年変わります。2026年度の料率は厚生労働省の公式資料で確認できます。


令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省(PDF)