勤務間インターバル制度は何時間が厚生労働省の基準か

勤務間インターバル制度で厚生労働省が推奨する休息時間は何時間なのか。9時間・11時間それぞれの違いや、義務化の最新動向、助成金活用まで、知らないと損する情報をまとめました。あなたの会社は対応できていますか?

勤務間インターバル制度は何時間か、厚生労働省の基準を解説

残業後に翌朝すぐ出勤しても、会社に罰則はいまのところゼロです。


この記事の3つのポイント
推奨は9時間〜11時間

厚生労働省は「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」のインターバルを推奨。法的義務ではなく、現在は努力義務です。

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導入企業には最大120万円の助成金

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)を活用すれば、11時間以上の設定で最大120万円を受給できます。

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義務化の動きが進行中

2026年の労働基準法改正議論では、11時間インターバルの義務化が主要論点のひとつ。法案提出は見送られたが、準備は今から必要です。


勤務間インターバル制度とは何時間の休息を確保する制度か

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務が終了してから翌日の勤務が始まるまでの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保するための仕組みです。2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の一環として、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」が改正され、企業に対して制度の導入が努力義務として課されました。


つまり「頑張れば導入してね」という位置づけです。


日本では長年にわたり、長時間労働が常態化してきました。深夜まで働いたにも関わらず、翌朝には定刻通りに出勤しなければならないという状況が繰り返されてきた職場も少なくありません。勤務間インターバル制度は、こうした「働きすぎ」を構造的に是正するための制度として生まれた背景があります。


制度の考え方はシンプルで、「退勤から次の出勤まで、○時間以上は空けてください」というルールを企業が自ら設けることがポイントです。その○時間の部分をどう設定するかが、実務上の最大の論点になっています。


厚生労働省は、この休息時間の目安として「9時間以上」を推奨しており、助成金の申請条件においても9時間を最低ラインとして設定しています。ちなみに9時間というのは、夜23時まで残業した場合、翌朝8時以前の出勤を禁止するのと同じ意味合いです。イメージとしては「夜遅くまで仕事をした分、翌朝のスタートも後ろにずらす」という働き方です。


参考情報:厚生労働省が提供する制度の概要はこちらでご確認いただけます。


勤務間インターバル制度をご活用ください|厚生労働省 東京労働局


勤務間インターバル制度の9時間と11時間の違いを理解する

制度を調べると「9時間」「11時間」という2つの数字が繰り返し登場します。この違いを正確に理解しておくことは、制度の運用だけでなく、助成金の活用においても重要です。


まず、11時間という数字はEU(欧州連合)の基準に由来しています。EUの「作業時間指令」では、24時間ごとに最低11時間の連続した休息時間を付与することが義務付けられており、多くのヨーロッパ諸国がこのルールを法制化しています。日本の制度設計においても、この11時間が「理想的なインターバル時間」として参照されました。


11時間が基本です。


一方、9時間という数字は、厚生労働省が設定した助成金の下限基準として機能しています。助成金を受給するためには「少なくとも9時間以上」のインターバルを就業規則に定め、実際に導入することが条件となっています。9時間に設定した場合と11時間以上に設定した場合では、助成上限額が異なります。


具体的には以下のような設定になっています。


インターバル時間 助成上限額(新規導入) 補助率
9時間以上11時間未満 100万円 3/4(中小企業)
11時間以上 120万円 3/4(中小企業)


たとえば夕方18時に退勤した場合、9時間インターバルなら翌朝3時以降の出勤がOKとなり、11時間なら翌朝5時以降ということになります。これが22時退勤になると、9時間なら翌朝7時以降、11時間なら翌朝9時以降が最も早い出勤時刻です。深夜残業が続く職場では、11時間のインターバルがいかに実務的に大きな変化をもたらすか、おわかりいただけるでしょうか。


なお、「9時間未満でも問題ない」という考え方については注意が必要です。現行では罰則がないため即時の法的リスクはありませんが、制度を設けながら守られていない場合は行政指導の対象になり得るという点は押さえておく必要があります。


9時間未満は推奨外だけ覚えておけばOKです。


厚生労働省が推奨する勤務間インターバルの時間設定の根拠

「なぜ9時間や11時間なのか」という疑問を持つ方は多いはずです。実はこの数字には、生活行動の観点からの根拠があります。


厚生労働省の研究会の議論では、インターバル時間を設定するにあたって、睡眠時間・通勤時間・その他の生活時間を積み上げる形で逆算する手法が用いられました。睡眠時間として最低6時間、通勤往復で2時間、食事・入浴などの生活時間として3時間を合計すると11時間となります。これがEU基準の11時間と一致することから、11時間が理想的な基準として位置づけられました。


11時間が条件です。


一方で9時間という基準については、通勤時間を1時間程度と仮定し、睡眠を6時間確保することを前提に、最低限の生活時間として設定されたものと考えられています。つまり9時間は「ギリギリ人間らしい生活ができる下限」であり、11時間は「ワークライフバランスを維持できる理想値」という位置づけです。


この区別は、制度の運用において非常に重要です。9時間で助成金の条件は満たせますが、11時間のほうが受け取れる助成金額が大きく、従業員の健康維持や定着率向上といった副次的効果も期待できます。コストパフォーマンスの観点から、11時間設定を選ぶ企業も増えてきています。


厚生労働省が発行する「勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル」は、具体的な就業規則の規定例や運用のポイントが詳しくまとまっており、実務担当者には参照価値が高い資料です。


勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル|厚生労働省(PDF)


勤務間インターバル制度の義務化の動きと2026年の最新状況

2026年は勤務間インターバル制度にとって重要な節目になると注目されていました。労働基準法の大幅な改正が議論されるなかで、現在は努力義務にとどまっているこの制度を「義務化」することが主要論点のひとつとして浮上したためです。


結論は見送りです。


厚生労働省の労働政策審議会・労働条件分科会では、終業から翌日始業まで「原則11時間」のインターバル確保を義務化する方向での検討が進んでいました。しかし、2026年通常国会への法案提出は見送りとなり、現時点では施行時期が不透明な状況が続いています。


これは「何もしなくていい」という意味ではありません。見送りになったことで「準備できる猶予が少し延びた」と捉えるべきです。改正の議論自体は続いており、義務化の方向性は変わっていません。特に、EUでは11時間の義務化が定着しており、国際的な労働基準との整合性を求める声は日本でも強まっています。


さらに、今回の改正議論では「14日以上の連続勤務禁止」「つながらない権利のガイドライン策定」なども論点として挙げられており、勤務間インターバルはその中核に位置する制度です。


  • ✅ 14日以上の連続勤務禁止(議論中)
  • ✅ 勤務間インターバル11時間の義務化(議論中)
  • ✅ 「つながらない権利」の法的明確化(議論中)
  • ✅ 有給休暇の賃金算定方式見直し(通常賃金方式の原則化)


金融業界を含む多くの企業では、こうした改正の動向を人事・労務の視点だけでなく、経営リスクの観点からもモニタリングしておくことが求められています。法改正が実現した際に対応が遅れると、就業規則の改定・システム改修・人員配置の見直しが一気に押し寄せる事態になりかねません。


【2026年】労働基準法の大幅改正は仕切り直し!提出見送りでも準備が必要な理由|Lacras(社労士監修)


勤務間インターバル制度の助成金活用と導入企業が得る実質的なメリット

勤務間インターバル制度を導入することで、企業が受けられる最も直接的なメリットのひとつが、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」です。これは使えそうです。


この助成金は、中小企業が勤務間インターバル制度を新たに導入する、または既存の制度の対象者を拡大する際に、かかった費用を補助するものです。対象となる費用の範囲は幅広く、就業規則の作成・変更にかかる社労士報酬、労務管理ソフトウェアの導入・更新費用、労務管理担当者向け研修の実施費用などが含まれます。


助成上限額は制度設計によって変わり、インターバルを9時間以上11時間未満に設定した場合は最大100万円、11時間以上に設定した場合は最大120万円が受け取れます(補助率は費用の4分の3)。さらに、制度導入と合わせて従業員の賃金を3%以上引き上げた場合は、引き上げ人数に応じて追加助成金が支給される仕組みです。


ただし、助成金の要件や支給額は年度によって変更されるため、申請前に必ず最新の公表資料を確認することが原則です。


働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省


導入企業が実感するメリットは助成金だけではありません。令和6年の就労条件総合調査(厚生労働省)によると、勤務間インターバル制度を導入している企業の割合は全体の5.7%にとどまっています。2019年の努力義務化前は1.8%だったことを考えると増加傾向にありますが、裏を返せば94%以上の企業がまだ未導入という状況です。


今導入することは、採用競争における差別化ポイントになります。


金融業においては特に、優秀な人材の確保と定着が重要課題です。制度を整備した企業は求人媒体での訴求力が上がり、離職率の低下による採用コストの削減につながるケースも出てきています。勤務間インターバルの設定と遵守は、従業員の睡眠時間と生活の質を直接改善する効果があり、中長期的な生産性向上にもつながる投資として考えることができます。


また、インターバル制度を就業規則に盛り込んだうえで遵守することは、労働基準監督署からの指導リスクを下げる効果もあります。長時間労働が常態化している職場では、制度を整備しておくことが、万が一の際のコンプライアンス上のリスク低減策にもなります。


メリットの種類 具体的な効果
💰 財務的メリット 最大120万円の助成金・採用コスト削減
👥 人事的メリット 離職率低下・優秀人材の採用力向上
⚖️ 法的リスク低減 行政指導リスクの軽減・コンプライアンス強化
📈 生産性向上 従業員の集中力・パフォーマンス改善


制度の導入を検討する際の最初のステップとしては、現状の従業員の退勤・出勤時刻のデータを集め、「現在のインターバルが何時間になっているか」を把握することが実務上の出発点です。勤怠管理システムを導入している企業であれば、インターバルのアラート設定を行うだけで管理負荷を大幅に下げることができます。


勤務間インターバル制度を導入した際の始業時刻繰り下げと賃金への影響

実務担当者が制度を導入するうえで最も悩むポイントのひとつが、インターバルの確保によって翌日の始業時刻が繰り下がった場合の扱いです。これは見落としがちな論点です。


たとえば通常9時始業の職場で、前日に深夜1時まで残業した場合を考えます。11時間インターバルを設定していれば、翌朝の最も早い出勤可能時刻は午後0時(正午)になります。そうなると、午前中の3時間(9〜12時)は通常の所定労働時間に食い込みます。


この「食い込んだ時間」の賃金をどう扱うかについて、厚生労働省は明確なルールを定めているわけではありません。就業規則の設計次第で対応が変わりますが、一般的に取られる方法は以下の2つです。


  • 🔄 始業・終業を両方繰り下げる方法:始業を遅らせた分、終業も遅らせる。この場合、インターバル中の時間は「勤務免除」として賃金を支払うかどうかを就業規則で定める必要があります。
  • 🔄 始業だけ繰り下げて終業は定時とする方法:遅れた分だけ実働時間が減る。この場合、インターバル中の時間に賃金が発生しない扱いが一般的です。


厚生労働省が発行した資料では、インターバル中の時間は「労働時間ではないため、原則として賃金は発生しない」という考え方が示されています。ただし、労使の合意によって「賃金をカットしない」という設計にすることも可能です。実際に制度を導入している一部の企業では、「インターバルによる短縮分は有給休暇を充当する」「勤務免除として賃金を保証する」といった設計を採用しているケースも見られます。


賃金設計が条件です。


この部分の設計を誤ると、従業員から「制度を使うと収入が減る」という不満が生じ、制度の形骸化につながりかねません。制度を導入する際は、賃金の扱いについて就業規則に明記し、社内に丁寧に説明する機会を設けることが、スムーズな運用のカギになります。特に金融業界では残業時間の管理が複雑なケースも多く、社労士などの専門家に相談しながら設計することが現実的な対応です。


勤務間インターバル就業規則規定例|厚生労働省 東京労働局(PDF)