地積規模の大きな宅地の評価でマンション相続税を大幅減額する方法

マンション1室の相続でも「地積規模の大きな宅地の評価」を適用すれば相続税が20%以上減額できる可能性があります。適用要件・計算方法・注意点を詳しく解説。あなたのマンションは対象になりますか?

地積規模の大きな宅地の評価とマンション相続税の減額ポイント

マンション1室しか持っていなくても、相続税が数百万円単位で戻ってくることがあります。


📌 この記事の3つのポイント
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マンション1室でも適用OK

「地積規模の大きな宅地の評価」は、マンション敷地全体の面積で判定するため、1室の区分所有でも対象になります。旧制度(広大地評価)では不可だった点が大きく変わりました。

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評価額が最大で約20%以上減額

規模格差補正率を適用すると、評価額が少なくとも20%以上下がります。例えば、横浜市の敷地面積2,000㎡のマンションでは補正率が0.75となり、約25%の減額が実現します。

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タワマン・都心物件は適用不可の場合あり

東京23区内では指定容積率300%以上、それ以外の地域では400%以上の土地は対象外です。タワーマンションは容積率が400〜800%程度のため、ほぼ適用できません。


地積規模の大きな宅地の評価とは何か、マンション相続との関係を理解する

「地積規模の大きな宅地の評価」とは、一定面積以上の広い宅地を相続した際に、通常の路線価評価よりも評価額を下げることができる制度です。平成30年(2018年)1月1日以降に発生した相続から適用が始まり、それ以前の「広大地評価」に代わる制度として国税庁が定めました。


広い土地を戸建住宅地として開発・分譲する場合、敷地内に道路・公園・調整池などを作るために宅地として使えない「つぶれ地」が発生します。この経済的な損失を相続税評価額に反映させることが制度の本来の趣旨です。


重要なのは、この制度がマンション敷地にも適用できるという点です。旧制度の広大地評価では、マンション敷地は原則的に対象外でした。しかし新制度では、マンション敷地であっても一定の要件を満たせば減額が受けられるようになっています。これは知っている人と知らない人で、相続税の負担額に大きな差が生まれるポイントです。


対象となる地積の規模は、三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏の既成市街地および近郊整備区域など)においては500㎡以上、それ以外の地域においては1,000㎡以上の宅地です。500㎡というのは、25m×20mの長方形に相当する広さで、テニスコート約2面分のイメージです。


参考:国税庁が公表している制度の概要と要件チェックシートはこちらで確認できます。


No.4609 地積規模の大きな宅地の評価|国税庁


地積規模の大きな宅地の評価がマンションに適用される4つの要件

マンション敷地にこの評価を適用するには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも外れると適用できないため、各項目の確認が必須です。


① 面積要件:敷地全体が500㎡以上(三大都市圏外は1,000㎡以上)


判定はマンション1棟の敷地全体の面積でおこないます。区分所有で1室しか持っていなくても、敷地全体の面積がこの基準を超えていれば要件を満たします。共有持分の割合で面積を案分する必要はありません。これが重要な点です。


② 地区区分要件:路線価の地区が「普通住宅地区」または「普通商業・併用住宅地区」


国税庁の路線価図に表示されている地区区分を確認します。「ビル街地区」「繁華街地区」「中小工場地区」「大工場地区」に所在する宅地は対象外です。路線価図は国税庁ホームページから無料で閲覧できます。


③ 都市計画要件:用途地域が工業専用地域でないこと


工業専用地域は住宅の建設ができない地域であるため対象外となります。住居系・商業系の用途地域であれば問題ありません。市区町村のウェブサイトや都市計画課で確認できます。


容積率要件:指定容積率が400%未満(東京23区は300%未満)


これが最大のポイントです。指定容積率が高い地域はタワーマンションなどの中高層建物の建設が標準的であり、戸建て住宅地への転用を前提とした評価減の趣旨に合わないため対象外となります。タワーマンションは容積率が400〜800%程度であることが多く、ほぼ適用できません。一方で、3〜5階建て程度の中低層マンションが建ち並ぶ住宅地であれば、適用できる可能性が高くなります。


なお、市街化調整区域に所在する宅地も原則対象外です。ただし、都市計画法第34条第10号・第11号に基づき宅地分譲にかかる開発行為を行うことができる区域は例外的に対象になります。


参考:マンション敷地への適用の有無を丁寧に解説しています。


マンション敷地は相続税評価額20%以上の減額?|SMTRC


地積規模の大きな宅地の評価における規模格差補正率の計算方法

要件を満たした場合、「規模格差補正率」という数値を使って評価額を減額します。この補正率が低いほど評価額は下がり、節税効果が大きくなります。規模格差補正率が原則です。


計算式は以下のとおりです。


$$規模格差補正率 = \frac{地積(㎡) \times B + C}{地積(㎡)} \times 0.8$$


(小数点以下第2位未満切り捨て)


B・Cの値は所在地域と地積によって次のように決まります。


〈三大都市圏に所在する宅地〉


| 地積 | B | C |
|------|------|------|
| 500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |


〈三大都市圏以外の地域に所在する宅地〉


| 地積 | B | C |
|------|------|------|
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 100 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 500 |


具体例で確認してみましょう。三大都市圏に所在する敷地面積2,000㎡のマンションに区分所有1室を相続した場合を想定します。


まず規模格差補正率を計算します。


$$規模格差補正率 = \frac{2,000 \times 0.90 + 75}{2,000} \times 0.8 = \frac{1,800 + 75}{2,000} \times 0.8 = \frac{1,875}{2,000} \times 0.8 = 0.75$$


この補正率0.75を使って、路線価地域の評価額を算出するときの計算式は以下のようになります。


$$評価額 = 路線価 \times 奥行価格補正率 \times 各種画地補正率 \times 規模格差補正率(0.75) \times 地積(㎡)$$


この地積規模補正を適用しない場合の補正率が1.00であることを考えると、25%の評価額減額が実現します。これは使えそうです。


さらに、この評価方法の大きなメリットとして、規模格差補正率を不整形地補正率や奥行価格補正率などほかの画地補正率と重複して適用できる点があります。旧制度の広大地補正率はほかの補正と併用できませんでしたが、現行制度では複数の補正を組み合わせて評価額をさらに引き下げることが可能です。


参考:規模格差補正率の詳細な解説と計算例が掲載されています。


地積規模の大きな宅地の評価(規模格差補正率)を徹底解説|税理士法人トゥモローズ


地積規模の大きな宅地の評価と小規模宅地等の特例を併用した場合の節税効果

見逃している方が多い論点があります。「地積規模の大きな宅地の評価」と「小規模宅地等の特例」は同時に使えるということです。


小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた自宅の土地など一定の宅地を相続した場合に、評価額を最大80%減額できる制度です。配偶者や同居親族などが自宅の土地を相続した場合、330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。


2つの制度は性質が異なります。「地積規模の大きな宅地の評価」は土地評価額の計算方法そのものに作用し、「小規模宅地等の特例」は算出された評価額をさらに減額する制度です。計算の順番としては、まず地積規模の大きな宅地の評価で評価額を算出し、その後に小規模宅地等の特例を適用して最終的な評価額を決定します。


これら2つを併用すると、節税効果が複利的に大きくなります。


たとえば、路線価が1㎡あたり30万円、敷地全体が2,000㎡の三大都市圏のマンションで、相続する1室の敷地権割合が1/50(敷地持分面積40㎡)の場合を考えます。


まず、地積規模の大きな宅地の評価を適用した場合の敷地全体の評価額は、規模格差補正率0.75を用いて次のように計算できます。


$$30万円 \times 0.75 \times 2,000㎡ = 4,500万円(敷地全体)$$


この敷地全体の評価額に敷地権割合(1/50)を乗じると、区分所有1室分の敷地評価額は90万円となります。


もし地積規模の大きな宅地の評価を適用しなければ、敷地全体の評価額は30万円×2,000㎡=6,000万円となり、1室分は120万円です。差額は30万円で、これが地積規模の評価適用による節税分となります。さらに小規模宅地等の特例を併用すれば、この90万円からさらに最大80%の減額が受けられます。


なお、地積規模の大きな宅地の評価は相続税だけでなく、贈与税にも適用できます。生前に広い宅地やマンション敷地の持分を贈与する場合にも活用できる点は、覚えておけばOKです。


地積規模の大きな宅地の評価でマンション相続税を還付申請する際の注意点

すでに相続税を申告・納付した後でも、この評価を適用できる可能性があります。条件は、相続発生日から5年10ヵ月以内であることです。この期間内であれば「更正の請求」という手続きにより、払いすぎた相続税の還付を受けることができます。


実際に、地積規模の大きな宅地の評価の適用漏れにより100万〜200万円規模で相続税が還付されたケースが報告されています。相続税の申告を不動産に詳しくない税理士に依頼した場合、この特例の見落としが発生しやすいと言われています。これは要注意です。


更正の請求を検討すべきケースとして、以下のような状況が挙げられます。


- 三大都市圏で500㎡以上のマンション敷地に区分所有していた
- 容積率が低い(東京23区なら300%未満、それ以外なら400%未満)住宅系マンションを相続した
- 相続税を申告してから5年10ヵ月以内である
- 相続時に不動産専門の税理士に依頼していなかった


手続きには専門的な書類作成が必要であり、土地評価に精通した税理士への相談が実質的には必須です。更正の請求には期限があります。期限を過ぎると、どれだけ適用できる要件を満たしていても1円も戻ってこなくなる点に注意してください。


また、誤解しやすい点として「基準容積率」と「指定容積率」の違いがあります。要件判定に使うのはあくまでも都市計画法で定められた指定容積率のみです。建築基準法で計算される基準容積率(前面道路幅員×0.4など)は判定に使いません。旧制度の広大地では基準容積率を考慮していましたが、現行制度では指定容積率だけを確認すれば大丈夫です。


指定容積率は、市区町村の都市計画課が公開している都市計画図で確認するか、各市区町村のウェブサイトから確認できます。多くの自治体でオンライン公開されており、自宅から調べることが可能です。


参考:相続税の還付実例と地積規模の大きな宅地の適用漏れについて詳しく解説されています。


土地の範囲を見直して200万円の相続税還付に成功した事例|富士総合研究所


郊外・地方の中低層マンション相続こそ「地積規模の大きな宅地の評価」の狙い目

多くの方が誤解しているのですが、この制度の恩恵を最も受けやすいのは都心のタワーマンションではなく、郊外・地方の中低層マンションです。


都心部やターミナル駅近くのマンションは容積率が高く設定されていることが多いため、東京23区では300%以上、その他の地域では400%以上となり、要件を満たさないケースがほとんどです。一方で、郊外の住宅街に立地する3〜6階建ていわゆる「低層〜中層マンション」は、容積率が150%〜300%程度であることが多く、要件を満たしやすい状況にあります。


さらに、路線価が比較的低い郊外や地方のマンションでも、敷地面積が広ければ規模格差補正率の適用による節税金額が大きくなるケースがあります。路線価が高いほど評価額が大きくなり、それに規模格差補正が乗ることで節税金額も大きくなります。金額ベースで見れば路線価の高い都市部の物件で節税額が大きくなりますが、制度の適用可能性という観点では郊外・地方の物件の方が対象になりやすいという事実があります。


また、三大都市圏の定義についても注意が必要です。「首都圏」「近畿圏」「中部圏」という言葉から東京・大阪・名古屋の中心部だけをイメージしがちですが、実際には首都圏整備法や近畿圏整備法などで定められた「既成市街地」「近郊整備地帯」が対象であり、埼玉・千葉・神奈川・茨城の一部、京都・兵庫・奈良・滋賀の一部、静岡・三重の一部なども三大都市圏として扱われます。三大都市圏に該当するかどうかは、市区町村の役所に確認するのが確実です。


参考:地積規模の大きな宅地の評価の適用要件と注意点がわかりやすく解説されています。


地積規模の大きな宅地の評価で相続税を減額できる!要件と評価方法|OAG税理士法人