acc電源取り出し作業において、まず重要なのがヒューズボックスの位置確認です。車種によって設置場所は異なりますが、運転席足元のAピラー根元付近、助手席グローブボックス裏、エンジンルーム内が一般的な設置箇所となります。
ヒューズボックス内のヒューズ配置は、通常カバー裏面に記載されている配線図で確認できます。この配線図を見ながら、どのヒューズがACC回路に対応しているかを特定します。
ヒューズの種類も重要な確認ポイントです。現在主流となっているのは、ミニ平型ヒューズ(ATO/ATC)と低背ミニ平型ヒューズ(LP-mini)です。古い車両では旧型のガラス管ヒューズが使用されている場合もあるため、対応する電源取り出し部品を事前に確認しておく必要があります。
バイクの場合、ヒューズボックスはシート下やダミータンク部分に配置されることが多く、メンテナンスリッドを外すとバッテリーと並んで設置されています。特にNC700Sなどでは、ラゲッジスペース内にボルト2本で固定されたメンテナンスリッドの下にヒューズボックスがあります。
ヒューズボックス確認時の注意点として、防水性能の確認も欠かせません。特にバイクでは雨水の侵入リスクが高いため、作業後の防水処理が重要になります。
検電テスターの正しい使用方法は、acc電源取り出し作業の成功を左右する重要な技術です。まず、検電テスターのクリップを車体金属部に接続してアース接続を行います。ドアヒンジ部分やボディのアース点が適切な接続場所となります。
ACC電源の特定方法は以下の手順で行います。
検電テスターには複数の種類があり、用途に応じて選択します。エーモンA49は基本的な通電確認用、1569はブザー音付きで極性確認も可能な上位モデルです。整備現場では音で確認できるタイプが作業効率の向上につながります。
ヒューズの金属端子部分にテスター先端を当てる際は、慎重に作業を進めます。滑って隣接するヒューズに触れると誤判定の原因となるため、テスター先端の形状確認と安定した手の位置取りが重要です。
特にバイクでの作業では、狭いスペースでの操作が多いため、L字型やフレキシブルタイプの検電テスターが有効です。また、作業中はヘッドライトなど大容量の電装品が作動し続けないよう、該当ヒューズを一時的に外すことも検討します。
電源の極性確認も重要な作業です。ヒューズボックス内では通常、バッテリー側(電源側)とロード側(負荷側)の端子があり、電源側から分岐を取る必要があります。NC700Sの場合、右側(アクセル側)が電源側となっています。
エーモン製のヒューズ電源は、acc電源取り出し作業における標準的な部品として広く使用されています。製品選択時は、対象車両のヒューズタイプと必要な電流容量を事前に確認することが重要です。
主要なエーモン製品の特徴。
取り付け作業では、まず対象ヒューズを車載工具のヒューズプラー(白い小型工具)で慎重に取り外します。ヒューズプラーがない場合は、ラジオペンチでも代用可能ですが、ヒューズへの損傷を避けるため力加減に注意が必要です。
エーモンのヒューズ電源本体に元のヒューズを差し込む際は、極性は関係ありませんが、車体側の電源極性は重要です。検電テスターで確認した電源側から分岐配線を取ることで、安定した電源供給が可能になります。
配線接続にはギボシ端子やエレクトロタップを使用しますが、整備現場では信頼性の高いギボシ端子接続が推奨されます。エレクトロタップは作業性は良いものの、長期使用での接触不良リスクがあるためです。
アース接続は、バッテリーのマイナス端子に直接接続するのが最も確実な方法です。ただし、配線の取り回しが困難な場合は、車体の確実なアース点を使用することも可能です。
特にバイクでは、D-UNITプラスのような統合型電源ユニットの活用も効果的です。3系統のACC電源と1系統の常時電源を一括管理でき、合計17.5Aの高出力に対応しています。
バイクでのacc電源取り出し作業は、車と比較して特有の注意点が存在します。まず、作業スペースの制約が最も大きな課題となります。シート下やサイドカバー内での作業が多く、狭い空間での精密作業が要求されます。
防水対策はバイクにおいて特に重要な要素です。車と異なり、直接雨水にさらされる環境での使用となるため、配線接続部やヒューズボックス周辺の防水処理が必須となります。
バイクの電装システムは車と比較して容量が小さいため、追加する電装品の消費電力に注意が必要です。特にUSB電源やナビゲーション機器など、連続使用する機器では、バッテリーへの負担を軽減するためリレー回路の併用が推奨されます。
エーモン1245などのリレーハーネスを使用することで、メインスイッチ連動での電源制御が可能となり、バッテリー上がりのリスクを軽減できます。
作業工具についても、バイク特有の配慮が必要です。T25トルクスドライバーやプラスドライバーなど、狭いスペースでの作業に適した工具選択が重要です。また、磁石付きの工具トレイを用意することで、小さなネジやヒューズの紛失を防げます。
振動対策も重要な要素です。バイクは車と比較して振動が大きいため、配線の固定方法や接続部の信頼性向上が必要です。結束バンドによる適切な配線固定と、接続部の定期点検が推奨されます。
グリップヒーター用のコネクターなど、メーカー純正の電源取り出し用コネクターが用意されている場合は、これらを活用することで作業の簡素化と信頼性向上が図れます。
acc電源取り出し作業において発生しやすいトラブルとその対処法について、実際の整備現場での経験を基に解説します。最も頻繁に発生するのが、電源が入らない、または不安定な電源供給の問題です。
電源が入らない場合の確認項目:
検電テスターが反応しない場合は、まずテスター自体の動作確認を行います。已知の電源(バッテリープラス端子など)で動作確認後、アース接続点を変更してみることが有効です。
配線作業での圧着不良も頻発するトラブルです。特にギボシ端子の圧着では、専用工具(エビFKシリーズなど)を使用せず、ペンチなどで代用すると接触不良の原因となります。適切な圧着工具の使用と、圧着後の引張テストによる確認が重要です。
ヒューズが頻繁に切れる場合の対処法:
バイクでの作業では、防水不良による腐食トラブルが多発します。特に接続部に水分が侵入すると、電食による接触不良や配線の断線が発生します。定期的な防水状況の点検と、必要に応じた再シーリング作業が予防策となります。
電装品の動作が不安定な場合は、電圧降下の測定が有効です。テスターのDC電圧測定機能を使用し、エンジン回転時と停止時の電圧変化を確認します。正常な場合、ACC ON時で12V以上、エンジン回転時で13.5-14.5V程度の電圧が得られます。
意外に見落としがちなのが、既存の電装品への影響です。新たに電源を分岐することで、元の回路に影響を与える場合があります。作業後は、元から接続されていた電装品の動作確認も必須の作業となります。
整備記録の作成も重要なトラブル対処法の一つです。作業内容、使用部品、配線ルートを記録しておくことで、将来のトラブル時の迅速な対応が可能となります。