acc電源(アクセサリー電源)は、車両のイグニッションキーをACCポジションまたはONポジションにした時のみ通電する電源回路です。常時電源とは異なり、エンジン停止時には自動的に電源が切れるため、バッテリー上がりを防ぐ重要な機能を担っています。
日本車における配線色の標準化について、以下の色分けが一般的に採用されています。
シガーソケットは最も身近なacc電源の取り出し口として機能しており、標準的な容量は90W~120W程度です。しかし近年の車載機器増加により、単一のシガーソケットでは電力不足が生じるケースが増えています。
電力計算の基本公式。
電力[W] = 電流[A] × 電圧[V]
例:7.5Aヒューズ × 12V = 90W
例:10Aヒューズ × 12V = 120W
配線識別において最も重要なのは、テスターによる電圧確認作業です。単純に配線色のみに依存せず、実際の電圧測定により確実な識別を行うことが安全作業の基本となります。
識別手順:
カーナビやオーディオ機器の背面配線では、バックアップ電源用に常時電源とACC電源の両方が接続されているケースが多く見られます。この場合、メモリー保持用の微弱電流は常時電源から、主動作電力はACC電源から供給される仕組みとなっています。
ヒューズボックスを活用したacc電源取り出しは、最も安全で確実な方法の一つです。ヒューズ電源と呼ばれる専用パーツを使用することで、既存回路への影響を最小限に抑えながら電源分岐が可能になります。
作業手順:
推奨するヒューズ回路:
避けるべきヒューズ回路:
取り出し可能電力の計算では、既存機器の消費電流を考慮した余裕のある設計が重要です。例えば15Aヒューズの場合、既存機器が5A消費していれば、追加機器は最大10A程度に留めることが安全運用の基本となります。
大電力を必要とする機器の電源確保には、バッテリーからの直接配線(バッ直)が有効な手段となります。この方法では主電源をバッテリーから直接取得し、リレーを介してACC連動制御を行います。
バッ直配線の構成要素:
配線経路の処理方法:
エンジンルームから車室内への配線引き込みでは、既存のグロメット(防水ゴム)を利用します。新たな穴開けは防水性能を損なう恐れがあるため、必ず既存の貫通部を活用することが重要です。
配線保護のため、以下の対策を実施。
現場でよく遭遇するacc電源関連のトラブルには、特定のパターンがあります。適切な診断手順を理解することで、効率的な問題解決が可能になります。
主要なトラブル症状と原因:
症状 | 考えられる原因 | 診断方法 |
---|---|---|
電源が入らない | ヒューズ断線、配線断線 | テスターによる電圧測定 |
電圧不足 | 接触不良、過負荷 | 負荷時電圧測定 |
断続的な電源遮断 | 接触不良、振動による配線不良 | 振動テスト |
段階的診断手順:
予防保全のポイント:
定期点検項目として、以下の確認を推奨します。
特に高温環境や振動の多い車両では、配線の劣化が加速する傾向があるため、通常より短い間隔での点検が必要となります。
また、後付け機器の追加時には、既存のACC回路への負荷集中を避けるため、負荷分散を考慮した配線設計が重要です。単一回路への過度な負荷集中は、ヒューズ容量以下であっても配線焼損のリスクを高める原因となります。
診断作業では、問題の根本原因を特定することが再発防止につながります。表面的な症状だけでなく、なぜその問題が発生したのかという背景要因まで含めた総合的な評価を行うことで、より信頼性の高い修理が実現できます。