acc電源取り出し方法と配線分岐技術

車両整備で欠かせないacc電源の基本知識から実践的な取り出し方法まで徹底解説。ヒューズボックス活用法やトラブル対処法も詳しく紹介しますが、あなたの現場で最も効果的な手法はどれでしょうか?

acc電源の基本知識と取り出し方法

acc電源取り出しの基本技術
🔌
基本概念の理解

キーオン時のみ通電するアクセサリー電源の仕組み

取り出し方法

ヒューズボックス、分岐配線、バッ直の3つの手法

🔧
実践ポイント

安全性と作業効率を両立する配線技術

acc電源とは何かシガーソケットとの関係

acc電源(アクセサリー電源)は、車両のイグニッションキーをACCポジションまたはONポジションにした時のみ通電する電源回路です。常時電源とは異なり、エンジン停止時には自動的に電源が切れるため、バッテリー上がりを防ぐ重要な機能を担っています。

 

日本車における配線色の標準化について、以下の色分けが一般的に採用されています。

  • ACC電源:赤色
  • 常時電源(+B):黄色
  • アース(GND):黒色

シガーソケットは最も身近なacc電源の取り出し口として機能しており、標準的な容量は90W~120W程度です。しかし近年の車載機器増加により、単一のシガーソケットでは電力不足が生じるケースが増えています。

 

電力計算の基本公式。
電力[W] = 電流[A] × 電圧[V]
例:7.5Aヒューズ × 12V = 90W
例:10Aヒューズ × 12V = 120W

acc電源配線の色分けと識別方法

配線識別において最も重要なのは、テスターによる電圧確認作業です。単純に配線色のみに依存せず、実際の電圧測定により確実な識別を行うことが安全作業の基本となります。

 

識別手順:

  1. キーOFF状態での測定
    • ACC配線:0V
    • 常時電源配線:12V
  2. キーACC/ON状態での測定
    • ACC配線:12V~14V(発電時)
    • 常時電源配線:12V~14V
  3. 負荷接続時の電圧降下確認
    • 健全な回路:11V以上を維持
    • 問題のある回路:大幅な電圧降下

カーナビやオーディオ機器の背面配線では、バックアップ電源用に常時電源とACC電源の両方が接続されているケースが多く見られます。この場合、メモリー保持用の微弱電流は常時電源から、主動作電力はACC電源から供給される仕組みとなっています。

 

ヒューズボックスからacc電源分岐手順

ヒューズボックスを活用したacc電源取り出しは、最も安全で確実な方法の一つです。ヒューズ電源と呼ばれる専用パーツを使用することで、既存回路への影響を最小限に抑えながら電源分岐が可能になります。

 

作業手順:

  1. ヒューズボックス位置の確認
    • 車両マニュアルで正確な位置を確認
    • 室内ヒューズボックスとエンジンルーム内の両方をチェック
  2. 適切なヒューズの選定
    • ACC回路であることの確認(キーON/OFF時の通電状態確認)
    • 使用機器に適した電流容量の選択
    • 車両運行に影響しない回路の選択
  3. ヒューズ電源の取り付け
    • 既存ヒューズの取り外し
    • ヒューズ電源への交換
    • 配線の適切な処理

推奨するヒューズ回路:

  • シガーソケット系統(10A~15A)
  • オーディオ系統(10A~15A)
  • アクセサリー系統(7.5A~10A)

避けるべきヒューズ回路:

  • エンジン制御系統
  • 安全装置系統(SRS、ABS等)
  • 灯火類系統

取り出し可能電力の計算では、既存機器の消費電流を考慮した余裕のある設計が重要です。例えば15Aヒューズの場合、既存機器が5A消費していれば、追加機器は最大10A程度に留めることが安全運用の基本となります。

 

バッテリー直結によるacc電源増設

大電力を必要とする機器の電源確保には、バッテリーからの直接配線(バッ直)が有効な手段となります。この方法では主電源をバッテリーから直接取得し、リレーを介してACC連動制御を行います。

 

バッ直配線の構成要素:

  1. 主電源ライン
    • バッテリー正極からの太径ケーブル
    • 適切な容量のヒューズ(バッテリー近辺に設置)
    • リレーボックスまでの配線
  2. 制御回路
    • ACC電源からリレーコイルへの配線
    • リレー接点による主電源のON/OFF制御
    • 車室内機器への配線
  3. 安全装置
    • メインヒューズ(30A~50A程度)
    • 個別機器用ヒューズ
    • 適切な配線処理

配線経路の処理方法:
エンジンルームから車室内への配線引き込みでは、既存のグロメット(防水ゴム)を利用します。新たな穴開けは防水性能を損なう恐れがあるため、必ず既存の貫通部を活用することが重要です。

 

配線保護のため、以下の対策を実施。

  • 配線の適切な固定(振動対策)
  • 熱源からの離隔
  • 摩擦による被覆損傷の防止
  • 防水処理の確実な実施

acc電源トラブル診断と対処法

現場でよく遭遇するacc電源関連のトラブルには、特定のパターンがあります。適切な診断手順を理解することで、効率的な問題解決が可能になります。

 

主要なトラブル症状と原因:

症状 考えられる原因 診断方法
電源が入らない ヒューズ断線、配線断線 テスターによる電圧測定
電圧不足 接触不良、過負荷 負荷時電圧測定
断続的な電源遮断 接触不良、振動による配線不良 振動テスト

段階的診断手順:

  1. 基本電圧確認
    • バッテリー電圧(12V以上)
    • ヒューズボックスでのACC電圧
    • 機器側での受電電圧
  2. 負荷テスト
    • 無負荷時電圧
    • 定格負荷時電圧
    • 電圧降下の測定
  3. 配線経路チェック
    • 中間接続点での電圧測定
    • 配線の物理的損傷確認
    • 接続部の締付確認

予防保全のポイント:
定期点検項目として、以下の確認を推奨します。

  • ヒューズの外観確認(変色、溶融痕)
  • 配線被覆の劣化状況
  • 接続端子の腐食状況
  • 固定バンドの緩み

特に高温環境や振動の多い車両では、配線の劣化が加速する傾向があるため、通常より短い間隔での点検が必要となります。

 

また、後付け機器の追加時には、既存のACC回路への負荷集中を避けるため、負荷分散を考慮した配線設計が重要です。単一回路への過度な負荷集中は、ヒューズ容量以下であっても配線焼損のリスクを高める原因となります。

 

診断作業では、問題の根本原因を特定することが再発防止につながります。表面的な症状だけでなく、なぜその問題が発生したのかという背景要因まで含めた総合的な評価を行うことで、より信頼性の高い修理が実現できます。