LEDウィンカーを取り付ける際に避けて通れないのがハイフラ現象への対策です。現代の車両では、ウィンカーリレーがコンピューター内蔵になっているため、従来の電球からLEDに交換すると消費電力の違いからハイフラ現象が発生します。
ハイフラ現象が起こる理由は、純正の電球が21W程度の消費電力を持つのに対し、LED電球は5~7W程度と大幅に少ないためです。コンピューターが「球切れしている」と誤認識し、運転手に知らせるために異常な高速点滅を行うのがハイフラ現象の正体です。
この現象を防ぐためには、不足している消費電力を補う抵抗器を並列に接続する必要があります。例えば、21Wの純正電球を7.2WのLED電球に交換した場合、13.8Wの消費電力が不足するため、この分を抵抗器で消費させなければなりません。
整備業界では、この対策として「抵抗内蔵タイプ」と「外付け抵抗タイプ」の2つの選択肢がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあることを理解しておく必要があります。
LEDウィンカー用抵抗の適切な値を算出するには、オームの法則を使用した正確な計算が不可欠です。計算手順は以下の通りです。
基本計算式
具体例として、21Wの純正電球を7.2WのLED電球に交換する場合。
計算結果が10.4Ωの場合、理想的には10Ωの抵抗器を選択します。ただし、抵抗値は小さい方向で選ぶことが重要で、9Ω、8Ωといった順序で検討します。
抵抗値選択の注意点
抵抗値が大きすぎると消費電力が不足してハイフラが解消されず、小さすぎると過度な発熱と電力消費を招きます。10Ω必要な場合に3Ωを使用すると、本来14.4Wで済むところが48Wもの電力を消費し、これはハンダごて(20W)の2倍以上の発熱量になります。
計算上の適正値から±1Ω程度の範囲で抵抗器を選択することで、効率的かつ安全なハイフラ対策が可能になります。
LEDウィンカー用抵抗器の最も深刻な問題は発熱です。実測データによると、5分間の点滅で以下の温度に達します。
抵抗値別発熱温度
これらの温度は、長時間使用やハザード点滅時には400℃近くまで上昇する可能性があります。この発熱量はハンダが溶け出す温度域であり、適切な取り付けを行わなければ火災の原因となります。
安全な取り付け方法
抵抗器の取り付けで最も重要なのは「空中に浮かせる」ことです。以下の手順で安全に取り付けます。
配線の注意点
抵抗器への配線は以下の仕様を推奨します。
リアウィンカーをLED化する場合でも、フロントのウィンカーライン部分に抵抗器を取り付けることで対応可能です。ただし、前後両方をLED化する場合は、左右それぞれに前後分の抵抗器が必要になります。
LEDウィンカーのハイフラ対策には、抵抗内蔵タイプと外付けタイプの2つの選択肢があります。それぞれの特徴を詳しく比較します。
抵抗内蔵タイプの特徴
抵抗内蔵タイプは取り付けが簡単で、追加の配線作業が不要というメリットがあります。しかし、LEDと抵抗器が近接配置されるため、熱によるLED劣化のリスクが高くなります。LEDの主な弱点は静電気と熱であり、発熱する抵抗器を内蔵することは「狂気の沙汰」とまで評する専門家もいます。
抵抗内蔵タイプの問題点。
外付けタイプの特徴
外付けタイプは取り付け作業が複雑になりますが、安全性と耐久性の面で優れています。抵抗器を適切な場所に設置することで、発熱によるリスクを最小限に抑えることができます。
外付けタイプのメリット。
車検対応について
どちらのタイプでも車検対応製品を選択することが重要です。ただし、車検対応であっても、不適切な取り付けによる安全性の問題は別次元の話であることを理解しておく必要があります。
整備業界では安全性を最優先に考慮し、外付けタイプを推奨する専門店が多いのが現状です。
LEDウィンカー抵抗の選定と取り付けにおいて、整備業界でよく見られる間違いや危険な判断について解説します。これらの知識は顧客の安全を守るために不可欠です。
価格重視の危険な選択
「安い抵抗器で済ませよう」という判断は非常に危険です。海外製の安価な抵抗器は品質が不安定で、想定以上の発熱や早期故障のリスクがあります。見た目が良い高価な抵抗器でも、発熱量は同じであることを理解し、価格ではなく適切な仕様と安全な取り付けに重点を置く必要があります。
「1個で済ませる」という発想の危険性
前後両方のウィンカーをLED化した際、「抵抗器1個で対策できる」という提案をする業者がいますが、これは極めて危険です。約3Ωの抵抗器を使用すれば前後対策は可能ですが、熱量は2倍になり、落下や配線接触があれば確実に火災になります。
不適切な取り付け場所
知識の乏しい業者による取り付けでは、以下のような危険な場所に抵抗器が設置されることがあります。
これらの取り付けでは周囲が黒焦げになる事例も報告されています。
ハイフラ対策の盲点
LEDウィンカーの重要なデメリットとして、不点灯になってもハイフラにならないという問題があります。従来の電球では球切れ時にハイフラで異常を知らせてくれましたが、LEDでは気付かずに車検不適合や事故のリスクを抱えることになります。
顧客への適切な説明責任
整備業者として、以下の点を顧客に必ず説明する義務があります。
単純な「取り付け可能」という説明だけでは、後々のトラブルや事故の責任を問われる可能性があります。
長期的な視点での提案
抵抗内蔵タイプは短期的には問題なくても、2-3年後の熱劣化による故障リスクが高くなります。顧客の車両使用期間や用途を考慮し、長期的な安全性とコストパフォーマンスを総合的に判断した提案が求められます。
これらの落とし穴を避けることで、顧客の安全を確保し、整備業者としての信頼性を維持することができます。LEDウィンカー抵抗の取り扱いは、単なる部品交換ではなく、安全性を最優先とした総合的な技術判断が必要な作業であることを常に念頭に置く必要があります。