抵抗内蔵LEDウインカーの最大のデメリットは、発熱による耐久性の低下です。ハイフラ防止のために内蔵された抵抗は、純正の白熱球と同等の21W程度の電力を熱として消費します。
この発熱メカニズムには以下の問題があります。
IPFの研究によると、電子回路やLEDなどの部品が限界温度を超えると、一時的には動作しても短命になることが確認されています。特に夏場の車内温度上昇時や長時間のハザード点灯では、内部温度が100℃を超える場合もあります。
リアウインカーでは特に深刻で、周囲が樹脂パネルで囲まれた狭い空間に熱が蓄積されるため、バルブ自体だけでなく周辺部品への熱影響も懸念されます。
抵抗内蔵LEDウインカーは一般的なLEDバルブと比較して価格が高く設定されています。この価格差には技術的な理由があります。
主な高価格化要因は以下の通りです。
市場価格を比較すると、一般的なLEDウインカーバルブが2000円程度に対し、抵抗内蔵タイプは4000円以上となることが多く、約2倍のコストがかかります。
さらに寿命の短さを考慮すると、交換頻度の増加により長期的なコストパフォーマンスは悪化します。整備業務においても、頻繁な交換作業により工賃収入は増加しますが、顧客満足度の低下につながる可能性があります。
抵抗内蔵LEDウインカーの重大な問題として、本来の安全機能である故障検知機能の失効があります。
通常のハイフラッシャーシステムでは以下の流れで故障を検知します。
しかし抵抗内蔵タイプでは、LEDが故障して不点灯になっても抵抗が電流を消費し続けるため、車両側では「正常」と判断されハイフラが起こりません。
この現象の危険性。
実際の整備現場では、定期点検時に「ウインカーが点灯しないのに客が気づいていない」という事例が報告されています。これは保安基準違反となる重大な問題です。
抵抗内蔵LEDウインカーは、車種によって適合性に大きな差があります。車両の故障検知システムが多様化している現状では、一律の対応が困難です。
車種別の検知方式の違い。
特に新しい車種では、CANバス通信による詳細な診断機能を持つものが増えており、単純な抵抗追加では対応できない場合があります。
リアウインカーでの物理的制約も深刻です。
これらの問題により、「汎用品」として販売されていても実際には適合しない車種が存在するのが現状です。
整備現場では、抵抗内蔵LEDウインカーのデメリットを理解した上で、顧客に適切なアドバイスを提供することが重要です。
推奨される対応方針:
顧客説明のポイント:
技術的な代替案:
整備士として最も重要なのは、顧客の使用環境や車両特性を総合的に判断し、最適なソリューションを提案することです。「取り付けやすい」という理由だけで抵抗内蔵タイプを選択するのではなく、長期的な信頼性と安全性を優先した提案を心がけるべきです。
また、抵抗内蔵タイプを取り付ける場合は、定期的な動作確認の重要性を顧客に説明し、点検間隔を短縮することも考慮する必要があります。これにより故障の早期発見と安全な車両運行を確保できます。