近年の自動車盗難において、CANインベーダーと呼ばれる手口が急速に拡大しています。この手法は、車両のCAN通信システムに不正アクセスすることで、わずか5分程度で車両を盗み出すことが可能な極めて巧妙な犯罪手法です。
犯行の流れは以下のようになります。
特に狙われやすいのは、バンパー横から簡単にアクセス可能な位置にコネクターが配置されている車種です。ランドクルーザープラド150系、ランドクルーザー300系、アルファード、ヴェルファイアなどの高級SUV・ミニバンが主要なターゲットとなっています。
従来のセキュリティシステムでは、このような電子的な攻撃に対して十分な対応ができないことが判明しており、物理的な防護策の重要性が高まっています。
CAN GUARD(CANガード)は、株式会社CROSS MEMBERが開発した画期的な盗難防止器具です。この製品の最大の特徴は、電子的なセキュリティではなく、物理的な防護によってCANインベーダーを阻止する点にあります。
製品の主要な構造要素。
CANガードの防護原理は極めてシンプルかつ効果的です。ステンレス製のカバーがコネクター部分を完全に覆い、盗難機器の物理的な接続を不可能にします。このアナログ的なアプローチが、デジタル犯罪に対する確実な防御壁となっています。
設置後は特殊ネジで固定されるため、一般的な工具では取り外しができません。専用工具の入手は困難であり、仮に工具があったとしても取り外しには相当な時間と技術が必要となります。
株式会社オザキの特許第7374537号を取得した技術を基盤としており、製品の信頼性と技術的優位性が保証されています。
CANガードは車種ごとに専用設計されており、それぞれ異なる仕様と取り付けポイントが設定されています。
プラド150系後期専用仕様。
ランドクルーザー300系専用仕様。
アルファード・ヴェルファイア専用仕様。
各製品に共通する梱包内容。
取り付け位置の特定には、車種ごとの詳細な知識が必要です。特にランドクルーザー300系では、ヘッドライト上部の刻印確認が必須となっており、間違った製品を選択すると取り付けができない可能性があります。
CANガードの取り付けは、専門知識を持つ整備工場での施工が推奨されています。一般的な取り付け工賃は約20,000円程度が相場となっています。
標準的な取り付け手順。
取り付け後の注意点として、定期的な固定状態の確認が重要です。特殊ネジの緩みや、カバーの損傷がないかを定期点検で確認することで、長期的な防犯効果を維持できます。
また、取り付け証明書の発行や、保険会社への報告なども、整備工場が代行してくれる場合があります。これにより、盗難保険の条件面での優遇を受けられる可能性もあります。
CANガードは極めて効果的な盗難防止装置ですが、完璧な防御システムは存在しません。そのため、複数のセキュリティ対策を組み合わせた多重防御システムの構築が推奨されています。
推奨する多重セキュリティ構成。
整備業界での新しいサービス展開。
近年、整備工場では単純な取り付け作業を超えた、総合的なセキュリティコンサルティングサービスが注目されています。
特に、CANガードの効果をステッカーで可視化することで、犯罪者への心理的プレッシャーを与える効果も期待できます。ただし、ステッカーのデザインや配置については、車両美観との調和も考慮する必要があります。
業界動向と将来展望。
CANガードの累計販売台数は半年で2,000台を突破しており、整備業界での認知度も急速に高まっています。今後はレクサスなどの高級車ブランドへの対応拡大も予定されており、対象車種の拡充が期待されています。
また、自動車メーカー側でも純正レベルでの対策強化が進んでおり、2022年10月以降のランドクルーザー300系では純正対策品が標準装備されています。しかし、純正対策とCANガードを併用することで、より高い防犯効果が得られることが確認されています。
整備業界としては、これらの技術動向を常に把握し、顧客に最適なセキュリティソリューションを提供することが重要な競争優位性となっています。